1. 補助金ポータルTOP
  2. 士業ブログ
  3. 「事業再構築補助金」と実施見通しについて

「事業再構築補助金」と実施見通しについて

第1 はじめに

1、「事業再構築補助金に係る第12回以降の公募について」(『事業再構築補助金』ホームページ、2023年12月8日)によると、本事業は、同年11月12日に内閣府が実施した「秋のレビュー」(公開検証)の結果「を踏まえた見直しを行った上で公募を再開する予定です」と告知するのみで、どういった内容で再開するのかは公表されていません。
2、また、「中小企業の「事業再構築補助金」採択停止を提案 行政事業レビュー」(『毎日新聞』2023年11月13日付)との記事も出たことから、「「事業再構築補助金」は(次の12回で)終了するのではないか」と囁かれています。
 そこで、実際のところを、政府資料を基に検証するものです。

第2 「行政事業レビュー」と「事業再構築補助金」に対する評価

1、内閣府は「行政事業レビュー」を有識者と交えて実施し、事業が適切に行われているか、改善する余地はないか等を検討して、最終的に来年度以降も当該事業を実施するのか否かを決めています。いわゆる「事業仕分け」です。
2、先にも取り上げた通り、昨年11月12日に、「令和5年度秋の年次公開検証(「秋のレビュー」) 」の2日目が実施され、そこで「(コロナ関連) 中小企業等事業再構築促進基金」が議題となりました。
 この中で、評価者(有識者)が次の発言をしています。
 「この事業をこのまま続けるのは反対です。そういったシステムがきちっとできて、本来は政策判断資料を政策判断者に諮問する経産省なり、中小企業庁で集計のモニタリングと分析をすべきです。これを委託先に任せるのはあり得ないと思います。そういった体制を整えるので、新たな事業採択を止めてもらったほうがいいのではないかとさえ思います」(『令和5年度秋の年次公開検証(「秋のレビュー」)(2日目)
(コロナ関連)中小企業等事業再構築促進基金』11頁、2023年11月12日、内閣官房 行政改革推進本部事務局)。
 「新たな事業採択を止めてもらったほうがいい」という発言から、「採択停止を提案」とか「「事業再構築補助金」は終了か」と噂されているのではないかと思います。
 しかし、この議事録をよく読みますと、評価者自身も「「事業再構築補助金」の役割を終えた」と言う観点から発言しているのではありません。先の発言前段では「効果検証からしてもデータ収集はよく考えてください。補助金だからこういうずさんな形になっているのではないですか。私もファンドマネジャーをやったことあるのですが、ファンドマネジメントの中でこんなずさんのデータ収集や分析はないです。特に経済政策、ビジネスのプロジェクトだったら、最低四半期です。四半期にデータをチェックしていくのは当たり前です。報告書が出てから分析しますという話ではないです。
 しかも、喫緊の課題だといって補助金を入れたわけです。何を悠長にそういう指導もできない、フォローアップもできないような状態でやっているのかというのは、私が知っている経産省にすれば不思議な感じがして、補助金だからこそ投げ切ってしまって、これは別の先生にお願いしますけれども、丸投げした委託先に全部おんぶに抱っこで、真剣味とか、緊張感が全くないのではないかと感じてしまいます」(同10頁)。
 要するに、評価者は、事業を民間事業者に丸投げをして、経済産業省が主体的になって、本事業のデータ収集等を行っていないため、そういった体制が構築されるまで、採択事業を中止してはいかがか、と述べていると考えられます。
 ただ、同評価者は、「コロナパンデミックの経済活動への影響は回復傾向にあって、中小企業が直面している問題もかなり変わってきています」、「政府が直接関与してまでやる喫緊の課題なのかというと、そうではない課題のほうが喫緊の課題としてはあるのではないか。この事業はある程度役割を終えて、これ以上新しい事業採択をすべきではない。まさしくこの事業こそ再構築しなければいけないのではないかと考えています。
 成長市場への参入とか、サプライチェーンの再構築というのは、ああいう事態ではあり得るのですけれども、通常だと企業の自律的経営の判断の中でトライすべき課題だと思っています。この事業は既に役割を終えたのではないかと思っています」と、コロナ禍を理由とした「事業再構築補助金」に疑問を呈しています(同11頁)。

第3 「基金シート」と「外部有識者の所見」

1、上記議論を踏まえて『令和5年度基金シート』(基金シート番号28、経済産業省)には、以下にまとめられています。
 「外部有識者の所見」には「業種ごとに状況が異なることを踏まえると、現行のような一律の付加価値目標が適切なものか、あらためて確認すべき」、「枠の創出に当たってもそれなりのエヴィデンスベースの調査を積み上げるべきではないか。果たしてそのような枠が必要かあるかどうかもきちんとファクトに基づいてチェックすべきではないか。ある程度今後は事業ごとにおける必要性を見ていってもよいように思う。少なくとも、どのようなニーズを捉えて枠としたのかを国民にわかりやすく示すべき」、「中小企業の活動や収益基盤がしっかりしていくのは日本の景況感にとっても重要である。とはいえ、中小企業にむけた他の補助金や政策とのリダンダンシーがないようにすることも重要である」などの所見が記述されています。
 これを受けて「所見を踏まえた改善点」として「本年度より、初年度に公募した第1~4回公募を中心に、補助事業終了後1年目の事業化状況報告が提出されるため、初期的な分析は開始している。また、補助金の採否に関わらず継続的な情報提供を行うことに同意する事業者に対して加点する仕組みを構築することで、不採択事業者のその後の状況についても可能な限り把握できる枠組みとしている」と述べられています。
2、「行政事業レビュー推進チームの所見に至る過程及び所見」としては「有識者のご指摘を踏まえて、所要の対応を行うこと」でした。

第4 「事業再構築補助金」は今後も実施されるのか(私見)

1、私は、令和6年度も「事業再構築補助金」は継続実施されると考えています。
 一方、本事業の趣旨・目的はリニューアルされて、募集枠も従来とは異なるものになるとも考えています。
2、そもそも、「事業再構築補助金」の「事業の目的」は、「長引く新型コロナウイルス感染症の影響」でした。しかし、政府は昨年5月より新型コロナウイルスの類型を「2類相当」から「5類」に引き下げました。これらをはじめとして、政府としてはコロナ禍を理由とした特別の施策の引き揚げを行っています。
3、そのため、今後実施するに当たっても、 例えば、BCP(事業継続計画)の作成による、自然災害、大火災において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続・早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを構築する取り組みや、物価高騰にも強靭な事業を構築するための取り組み、これらを維持するためのサプライチェーンの強化に対する取り組みなどの補助金事業へ変化して行くのではないかと考えています。  以上

【参考文献・資料】
文中に記述のとおり。

☑お問い合わせ先(松田史男行政書士事務所)

補助金ポータルからの
お知らせ

お知らせ一覧
ITトレンド_IT導入補助金
会員登録
補助金顧問
LINE登録
専門家パートナー募集中
補助金ポータル公式アカウントLINE@ クリックして友達追加する