少子高齢化を背景とした人手不足が深刻化するなか、働きたいのに働けずにいる人たちの雇用安定や環境整備が急務です。厚生労働省はこうした潜在的就労希望者の支援として、トライアル雇用助成金を設置しています。
トライアル雇用助成金の「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース」は、障害者の雇用を検討している事業者が対象です。特に未経験者の障害者を雇用する際、試験期間を設けて適性を見極めたいと考えている事業者は、ぜひ活用してください。
今回はトライアル雇用助成金の障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコースの内容や申請方法をお伝えします。
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この記事の目次
トライアル雇用助成金とは
トライアル雇用とは、職業経験が不足する求職者等に対し、無期雇用契約へ移行することを前提にして、原則3か月間の試行雇用を行うことです。トライアル雇用助成金はこうした取組を行う事業者に助成金を交付し、求職者の早期就職の実現や雇用機会の創出を目指します。
トライアル雇用助成金では、「一般トライアルコース」と「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース」、さらに「若年・女性建設労働者トライアルコース」があります。一般トライアルコースでは、母子家庭の母や父子家庭の父、季節労働者などが対象です。
トライアル雇用助成金全体の流れは、以下の図を参照してください。
出典:トライアル雇用
障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコースの概要
障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコースは、対象となる労働者の条件などが違います。各コースの概要は、以下のとおりです。
障害者トライアルコース
ハローワークなどを通じて、就職が困難な障害者を一定期間雇用した場合に対象となります。これは該当の労働者の適性や業務遂行可能性を見極め、求職者・求人者の相互理解を促進するものです。
障害者の早期就職の実現や、雇用機会の創出を目的としています。
障害者短時間トライアルコース
継続雇用する労働者として雇用することを前提に、一定の期間、障害者を試行的に雇用する場合に対象となります。
雇入れ時の週の所定労働時間は、10時間以上20時間未満です。障害者の職場適応状況や体調等に応じて、これを20時間以上とすることを目指します。
トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)の助成額
障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコースは、対象労働者のトライアル雇用に必要な費用に助成が受けられる制度です。助成金額は、コースによって違います。
また、実際の交付額は就労日数をもとに算出されます。
各コースの助成金額や計算方法は、以下のとおりです。
【助成金額】
障害者トライアルコース |
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①対象労働者が精神障害者の場合 ・月額最大8万円を3か月 ・月額最大4万円を3か月 (最長6か月間) ②上記以外の場合 月額最大4万円 (最長3か月間) |
障害者短時間トライアルコース |
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①対象労働者が精神障害者の場合 月額最大4万円(最長12か月間) |
【計算方法】
助成額の算出に使用する「就労日数」は、実際の取組に応じて、以下のように数えます。
①障害者トライアル雇用等の期間が1か月に満たない月がある場合 |
・支給対象期間の途中で、本人の責めに帰すべき理由による解雇等により離職した労働者 【就労日数】= 離職月の初日から離職日までの期間中、実際に就労した日数 |
・支給対象期間の途中で継続雇用する労働者へ移行した場合 【就労日数】= 移行日前月の初日から移行日の前日までの期間中に、実際に就労した日数 |
・離職日が不明確な場合 【就労日数】= 賃金が支払われた最後の日までの期間中に、実際に就労した日数 |
②支給対象者本人の都合による休暇やトライアル雇用事業主の都合による休業があった場合 |
【就労日数】= その1か月間に実際に就労した日数 |
また、就労を予定していた日数に対する実際に就労した日数の割合(ア)が以下の表のようになる場合は、支給月額も同表のように定められます。
出典:トライアル雇用 パンフレット
トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)の対象者
トライアル雇用の対象となるには、要件があります。次は各コースの主な対象者要件を確認していきましょう。
【助成金の対象者】
各コースの対象者の主な要件は、以下のとおりです。
障害者トライアルコース |
①継続雇用する労働者としての雇入れを希望し、障害者トライアル雇用による雇入れを望む者 |
②次のいずれかに該当する者 ・就労経験のない職業に就くことを希望する者 ・2年以内に、離職が2回以上または転職が2回以上ある者 ・離職している期間が6か月を超えている者 ・重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者 |
なお、トライアル雇用の期間は原則3か月です。ただし、身体障害者と知的障害者は、1か月または2か月とすることができます(精神障害者は原則6か月、最大12か月)。
障害者短時間トライアルコース |
①継続雇用する労働者としての雇入れを希望し、障害者トライアル雇用による雇入れを望む者 |
②「精神障害者」または「発達障害者」であること |
対象となるトライアル雇用の条件
障害者トライアルコース |
・ハローワークや職業紹介事業者等の紹介によって雇い入れること |
・雇用保険被保険者資格取得の届出を行うこと | 障害者短時間トライアルコース |
・ハローワークや職業紹介事業者等の紹介によって雇い入れること |
・3か月から12か月間の、短時間トライアル雇用をすること |
そのほかに、雇用関係助成金共通の要件があります。
対象事業主
対象となる事業主の主な要件は、以下のとおりです。
①雇用保険適用事業所の事業主であること
②支給のための審査に協力すること
➂申請期間内に申請を行うこと
なお、次の事業主は対象外です。
- 不正受給による不支給決定等を受け、5年を経過していない
- 申請事業主の役員等に、他の事業主の役員等として不正受給に関与した役員等がいる
- 労指定の期間内に、働保険料を納入していない年度がある
- 1年間の間に、労働関係法令の違反があった
- 性風俗関連営事業者等(事務、清掃、送迎運転などのために雇用する場合を除く)
- 暴力団関係者等
申請から受給までの手順 - どうやったら?いつもらえるのか?
それでは、申請の方法について見ていきましょう。申請には必要書類の提出が必要です。
申請に必要な書類や申請の流れをまとめました。
【申請の流れ】
①障害者トライアル雇用等実施計画書の提出
障害者トライアル雇用等に係る雇入れ日から2週間以内に「障害者トライアル雇用等実施計画書」を提出してください。
■提出先
・ハローワークや地方運輸局から紹介を受けた場合:該当のハローワーク・地方運輸局
・職業紹介事業者から職業紹介を受けた場合:労働局またはハローワーク
②支給申請
■障害者トライアルコース
支給申請書等を、管轄のハローワークを経由して労働局に提出してください。提出期間は、障害者トライアル雇用終了後2か月以内です。
■障害者短時間トライアルコースの場合
支給申請書等を、管轄のハローワークを経由して労働局に提出してください。提出期間は、以下のとおりです。
・1回目の支給申請:障害者トライアル雇用開始6か月経過後から2か月以内
・2回目の支給申請:障害者トライアル雇用終了後2か月以内
①実施計画書
②障害者トライアル雇用等期間に係る雇用契約書や雇入れ通知書等
なお、職業紹介事業者等から職業紹介を受け、障害者トライアル雇用等を開始する場合には、対象者確認書類等も必要となります。
申請から助成金受給までの流れとタイムライン
前述のとおり、申請は原則としてトライアル雇用開始日から2週間以内に行います。雇用期間終了後、2か月以内に支給申請を行い、その後、申請が認められると助成金が交付される流れです。
全体のタイムラインは、以下の図も参照してください。
出典:トライアル雇用 パンフレット
まとめ
障害者トライアル雇用を利用して雇用される障害者数は年々増加し、期間終了後は多くの労働者が継続雇用されています。
人手不足の解消には、すべての人が自分のできることを見つけ、やりがいをもって働くことが大切です。トライアル雇用助成金を活用し、正式な雇用の前に課題を共有しておくことで、採用ミスマッチを防ぐことにもつながります。
助成金などの支援を上手に活用し、障害のある人もない人も、それぞれの能力を活かせる環境整備を進めていきましょう。