世界的なパンデミックを引き起こし、社会に大きな影響を及ぼした新型コロナウイルス。長く続いた混乱も一定の落ち着きを見せ、「ポストコロナ」の意識が浸透してからも、事業の回復が十分ではない企業が多くあります。
東京都では4月から、新たなニーズや需要の変化に対応しようとする事業者へ向けた支援策が始まります!この制度では、助成率2/3、最大800万円の支援が受けられ、設備等導入費やシステム等導入費、不動産賃借料、販売促進費など幅広い経費が対象になります。公募回数は全部で12回を予定しており、来年3月まで公募申請のチャンスがあります。
それでは早速、東京都で注目の支援策「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業」の詳細を見ていきましょう。
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この記事の目次
新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業とは
本事業は、既存事業の「深化」と「発展」を目指す取組が対象です。これまで営んできた事業内容との関連性が薄い取組や、法令改正への対応、競争力や生産性の向上に寄与しない取組は対象外です。まずは、新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業の目的と対象者を確認しましょう。
事業目的
コロナ後の需要回復や消費者ニーズの変化への即応は、中小企業にとって喫緊の課題です。しかしエネルギーや原材料価格、人件費の高騰が長期化し、企業活動に大きな負担を与えています。
本事業ではこうした問題の解決につなげるため、中小企業が創意工夫を活かして、既存事業を深化・発展させる計画を作成した場合の各種支援を展開します。都内中小事業者の経営基盤を強化することが目的です。
誰が対象になる?対象者要件
対象事業者の主な要件は、以下のとおりです。
主な要件 |
①都内の中小企業者 |
②下記のいずれかに該当すること - 直近決算期の売上高が「2019年の決算期以降のいずれかの決算期」と比較して減少している - 直近決算期において損失を計上している |
➂令和6年度において、本事業で1度も交付決定を受けていないこと |
④申請事業の実施場所に応じて、以下の条件を満たすこと(個人事業者の場合は、納税地が都内にあること) - 実施場所:東京都内 - 条件:東京都内に本店または支店がある - 実施場所:神奈川県、埼玉県、千葉県、群馬県、栃木県、茨城県、山梨県のいずれか - 条件:東京都内に本店がある |
⑤暴力団関係者や風俗営業者等でないこと - 同一テーマ・内容で、ほかの助成等を受けていないこと - 事業税等を滞納(分納)していないこと - 過去5年間に、助成事業等に関する不正等の事故を起こしていないこと - 助成事業の継続について不確実な状況が存在しないこと - 必要な許認可を取得し、関係法令を遵守していること - その他、公社が公的資金の助成先として適切でないと判断するものではないこと |
どんな事業が対象になる?助成対象事業は?
支援の対象となる取組は、「これまで営んできた事業の深化または発展」に注力し、経営基盤の強化につながると認められるものです。取組の実施に必要な費用の一部が補助されます。
【具体的な取組例】
ポストコロナ等における事業環境の変化を課題と捉え、その対応策として実施される取組が対象です。「深化」と「発展」、それぞれの取組例は、以下のとおりです。
①既存事業の「深化」= 経営基盤の強化に向け、既に営んでいる事業自体の質を高めるための取組 |
・高性能な機器、設備の導入等による競争力強化の取組 |
・既存の商品やサービス等の品質向上の取組 |
・高効率機器、省エネ機器の導入等による生産性の向上の取組 |
②既存事業の「発展」= 経営基盤の強化に向け、既に営んでいる事業を基に、新たな事業展開を図る取組 |
・新たな商品、サービスの開発 |
・商品、サービスの新たな提供方法の導入 |
・その他、既存事業で得た知見等に基づく新たな取組 |
なお、対象となる取組であっても、審査の結果不採択となる場合があります。
いくらもらえる?助成率・上限額
助成率と補助上限額は、以下のとおりです。
■助成率:2/3
■助成限度額:800万円
【助成金申請額の計算方法】
助成金申請額は、経費項目ごとに2/3を乗じて計算します(千円未満切り捨て)。詳細は以下の図も参照してください。
出典:募集要項
助成対象経費
主な助成対象経費は、以下のとおりです。
原材料・副資材費 |
原材料、副資材、部品等の購入に要する経費 |
機械装置・工具器具費 |
機械装置・工具器具等を新たに購入・リース・レンタルする際に要する経費 |
委託・外注費 |
・委託費 ・外注費 ・共同研究費 ・市場調査費 市場調査費のみの申請はできません。 |
産業財産権出願・導入費 |
・特許権、実用新案権等の出願に要する経費 ・特許権、実用新案権等を、他の事業者から譲渡または実施許諾を受けるための経費 |
規格等認証・登録費 |
・規格適合、認証の申請・審査・登録に要する経費 ・規格等認証・登録に係る外部専門家の技術指導等に要する経費 |
設備等導入費 |
設備・備品等の購入費およびそれらの設置工事等に直接必要な経費 |
システム等導入費 |
システム構築、ソフトウェア・ハードウェア導入、クラウド利用等に要する経費 |
専門家指導費 |
外部の専門家から専門技術等の指導・助言を受けるための経費 |
不動産賃借料 |
事務所、施設等を新たに借りるための経費 |
販売促進費 |
既存事業の「発展」による、新たな商品・サービス等の販売促進経費についてのみ申請可能です。販売促進費のみの申請はできません。 ・自社Webサイト制作・改修費 ・印刷物製作費 ・PR動画製作費 ・広告費 ・出展小間料 ・資材費 ・輸送費 ・通訳費 ・オンライン出展基本料 ・ECサイト出店初期登録料 上限は200万円です。 |
その他経費 |
本事業の取組に直接必要な経費で、他の経費区分に属さないもの 上限は100万円です。 |
【対象外経費】
以下の経費は、対象外です。
- 助成事業に直接関係のない経費
- 事前承認を得ずに変更等を行った場合の経費
- 現金、他社発行の手形・小切手等、指定の支払い方法以外の方法で支払った経費
- 直接人件費
- 租税公課
- 振込手数料、通信費、光熱費などの間接経費
- 借入金等の支払利息、損害遅延金、分割手数料、振込手数料、代引手数料、土地・建物、車両等の購入に要する経費
- テレビ、パソコンなど、汎用性があり目的外使用になり得るもの
- 中古品の購入、レンタル・リースに要する経費
- 支払いに際し、ポイントカード等によるポイントを取得・利用した場合のポイント分
- 公的な資金の使途として社会通念上、不適切と認められる経費
申請方法とスケジュール
それでは申請方法について見ていきましょう。申請は電子システムにて行います。また、現時点で第12回までの募集が予定されています。申請方法の詳細と、申請期間のスケジュール等は、次のとおりです。
【申請方法】
申請には、デジタル庁が運営する電子申請システムjGrants(Jグランツ)を利用します。電子申請のみ可能です。jGrantsにログインし、必要事項を入力して、申請書類等をアップロードしてください。
なお、jGrantsでの申請には、GビズID(プライムアカウント)が必要です。アカウントの取得には時間がかかるため余裕を持って、申請準備を行いましょう。
【申請期間】
第1回:令和6(2024)年4月1日(月)~令和6年4月15日(月)午後4時
なお、第2回以降の受付期間は、以下の表を参照してください。
出典:東京都中小企業振興公社
【スケジュール】
出典:募集要項
第1回募集では、申請から交付決定まで、以下のスケジュールで行われます。
申請受付期間 | 令和6年4月1日(月)~令和6年4月15日(月) |
書類審査 | 令和6年5月 |
面接審査 | 令和6年6月5日(水)~令和6年6月7日(金) いずれか1日、1時間程度が予定されています。 |
交付決定日 | 令和6年6月下旬予定 |
アドバイザー派遣 | 任意:交付決定日以降、助成事業者が希望する日 必須:完了検査とあわせて実施 |
詳細は、交付決定後に配布する「事務の手引き」にて確認してください。
申請に必要な書類とは?
申請に必要な主な書類は、以下のとおりです。
①申請様式
②誓約書
・反社会的勢力排除に関する誓約書
・助成金申請に関する誓約書
➂履歴事項全部証明書または開業届
④法人事業税納税証明書または個人事業税納税証明書
⑤法人都民税納税証明書または住民税非課税証明書
⑥決算書【損益計算書】または所得税確定申告書
時代の変化をチャンスに変える補助金活用
「ポストコロナ」が意識される昨今ですが、企業をとりまく環境は、かならずしも十分な回復を見せていません。帝国データバンクの調査では、「コロナ禍が終わった」と回答した企業は40.2%にとどまります。中小企業では、38.8%です。約3割の企業は「コロナ禍はまだ終わっていない」と答えました。
出典:帝国データバンク コロナ禍の終焉に関する企業アンケート
取引先への訪問等の制限がなくなる一方で、観光業では稼働率の回復が遅れるなど、業務内容や業種間における肌感覚の差も出ているようです。
時代の変化は、ビジネスにとってはチャンスでもあります。しかし新しいニーズへ迅速な対応ができるかどうかは、その後の企業成長に大きな影響をもたらします。
補助金等を活用し、初期の資金調達をスムーズに行うことが、その後の業績の伸びに差を生むことになるのです。
まとめ
今回ご紹介した「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業」は、現在の事業を時代にあったものにするために活用できる補助金です。既存事業のブラッシュアップを図ることは、消費者にとっても、そこで働く人にとっても、有意義な取組となります。
これまでの経験を活かし、さらに将来的な成長を目指して飛躍を続ける企業には、ぜひ利用してほしい制度です。