東京都では、令和6年度も「明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金」が実施されます。本助成金は、都内産業の活性化に向けて受注型中小企業の技術・経営基盤の強化を図るものです。
今回は4月から始まる第1回募集に向けて、助成内容や申請方法を確認していきましょう。これまでの助成活用事例もあわせて紹介します。
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この記事の目次
明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金とは
明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金では、技術・サービスの高度化・高付加価値化に向けた技術開発等に要する経費の一部が助成されます。
本助成は、東京都中小団体企業団体中央会を通じて中小企業等へ交付される仕組みです。なお、交付決定までには審査が行われます。
助成事業全体のスキームは、以下の図も参照してください。
出典:明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金【公募要領】
そのほか、対象となる事業者や事業の要件を見ていきましょう。
明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金 対象事業者は?
助成の対象となる事業者の主な要件は、以下のとおりです。
①以下のいずれかに該当する ■東京都内に本店等があり、2年以上事業を営んでいる中小企業者等(会社・個人事業者・組合等) ■上記中小企業者等によって構成される、中小企業グループ |
②事業税等を滞納していない |
➂東京都および中央会に対する債務の支払いが滞っていない |
④過去に不正等の事故を起こしていない |
⑤事業の継続性について不確実な状況が存在しない |
⑥暴力団関係者また風俗関連業等でない |
明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金 どんな事業が対象になる?
対象となる事業の主な要件は、以下の①~④です。
①発注者の仕様に基づいて製品、サービスを提供する都内の受注型中小企業者が行う、技術または提供するサービスの高度化・高付加価値化に向けた技術開発等である |
②自社における技術的課題の解決がある |
➂最終消費者に直接提供される製品またはサービスに関する取組ではない |
④実施場所は、自社もしくは東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、群馬県、栃木県、茨城県、山梨県のいずれかに所在する自社工場である |
明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金の助成率・助成限度額
助成限度額は、企業規模に関する区分によって異なります。助成率と各区分の助成限度額は、以下のとおりです。
助成率 | 助成対象と認められる経費の2/3以内 |
助成限度額 | 【小規模企業区分】1000万円 【一般区分】2000万円 |
最大で2000万円もらえる申請区分と対象経費
本事業における区分について、詳しく見ていきましょう。本助成事業では、業種に関する区分と企業規模に関する区分の2つが設定されています。
業種に関する区分は、日本標準産業分類において「大分類E製造業」に該当する事業者が対象の「ものづくり区分」と、それ以外の事業者が対象の「受託サービス区分」があります。該当する区分で申請を行ってください。
「ものづくり区分」 |
【取組例】 ・切削加工技術の精度向上 ・生産ラインの見直しで短納期・低コスト化 ・IT活用による生産管理システム導入 等 |
「受託サービス区分」 |
【取組例】 ・受発注可視化システムの構築 ・サービス提供過程の効率化 ・外部専門技術を活用したサービス能力の向上 等 |
企業規模に関する区分には、小規模企業区分と一般区分があります。それぞれ以下のとおりです。
最大で1000万円以内の小規模企業区分
中小企業基本法に規定する小規模企業者が対象です。助成額は最大で1000万円となります。「中小企業者」とは、具体的には以下のいずれかに該当する事業者を指します。
■中小企業基本法に規定する中小企業者及び個人事業者
■大企業(中小企業等以外の者:中小企業投資育成㈱、投資事業有限責任組合、大学を除く)が実質的に経営に参画していないもの
最大で2000万円以内の一般区分
小規模企業者を含めたすべての事業者が対象です。助成額は最大で2000万円となります。
対象となる経費とは
助成の対象となる経費は、以下のとおりです。
原材料・副資材費 |
技術開発等の実施に使用し、消費される原料・材料等の購入に要する経費 |
機械装置・工具器具費 |
・機械装置、工具器具類のリース、レンタル、購入、据付けに要する経費 ・機械装置を自社で製作する場合の部品の経費 |
委託・外注加工費 |
・技術開発等の一部について、専門事業者等に委託する経費 ・事業協同組合等が行う取組で、その構成員である中小企業に取組を委託する経費 ・人材育成・研修に要する経費 |
産業財産権出願・導入費 |
・製品等の特許や実用新案等の出願に要する経費 ・特許や実用新案等について、他の事業者等から譲渡または実施許諾を受ける経費 |
技術指導受入れ費 |
外部専門家から技術指導を受ける場合に要する経費 |
展示会出展・広告費 |
技術・製品・サービスを展示会に出展するために要する経費 |
直接人件費 |
ソフトウェアの開発に直接従事する者の、技術開発に要する時間に対応する人件費 |
明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業事例
東京都中小企業団体中央会のホームページでは、明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業事例集が公開されています。ここでは令和3年度版の事例集から、本事業を活用した企業の事例をいくつか見ていきましょう。
①印刷加工工程の最適化・見える化の実現
当企業では近年、EC経由の注文件数が急増した結果、作業現場の負荷が高くなっていた。また、どの印刷が終わっているのか製本担当者がリアルタイムに把握できず、製本設備をフル稼働できずにいた。
取組
こうした課題を解決するため、これまで手作業で行ってきた加工工程のプロセスの流れを、以下のように「見える化」した。
①スケジュール管理の実施 |
②効率的な生産順番による製造 |
③工程進捗状況の見える化 |
④Web受発注システムデータの活用 |
そして各課題に対応するシステム化要件を検討し、約12回の導入ベンダーとの検討会を経て、工程管理システムの開発を行った。
成果
工程管理システム「Production Cockpit」の導入では、既存のWeb受発注システムとの連携部分も開発した。受注データを自動連携させる機能により、印刷・製本の各加工工程の一元管理が実現し、以下の成果があがった。
①リング製本の段取時間の短縮 |
②グルーピング作業の自動化による品質向上 |
この結果、以前は2時間かかっていた進捗確認作業が1時間弱で完了し、仕事に余裕が生まれた。繁忙期の生産能力は約20%増え、年間で約3,000万円の売上増に貢献した。工程が複雑な絵本等の上製本についても生産性が向上した。
②中小企業向け海外市場開拓ECアプリ開発
当企業は、グローバルのソフトウェアメーカーのパートナー企業として、クラウドソフトの導入を担う。
これらの周辺アプリには日本語環境で動作するものは少なく、ECサイトを使った販売をしようとした場合には単独のECサイトを開発し、手作業で顧客情報、製品情報、価格情報、在庫情報を入力する必要があった。
取組
今回の取組みでは、顧客企業の基幹システムとECサイト・外部アプリを連携させることで手作業を不要とし、かつ海外販路開拓にも有用なECアプリを提供しようと試みた。
主要な機能要件としては、以下の3つが検討された。
①販売条件の異なる顧客別のECサイトを立ち上げられること |
②多言語対応が可能なこと |
③既存システムのデータを活用し、ECサイトの構築の時間・手間を削減可能なこと |
成果
技術的課題については、下記のように対応した。
①BtoB-ECアプリの開発 |
②多言語化機能の開発 |
③各アプリケーションを連携・統合するアプリ開発 |
開発したECアプリとシステムとのAPI連携の実装に関しては技術的な課題が発生したが、関係者のサポートや当社の技術陣の奮闘により、課題を一つひとつ解決していった。
そのことがお客様への技術的な開発・サポート力の蓄積となったことも、成果の一つである。
③短納期小ロット対応でのOEM事業拡大計画
有名キャラクター使用のライセンスを持つ当社では、定番のキャラクターグッズの販売に加え、ノベルティグッズ(おまけ)等期間限定商品の製作依頼に対応している。
これらは短納期かつ100個以下の小ロットの注文が多いうえ、廃棄在庫となるものが多く、他の製品も入れると多い時で年間約5000万円以上の廃棄損が生じていた。また納期的に間に合わない場合は失注することなどが経営課題となっていた。
取組
Tシャツ等の衣類、およびアクリル板等の材料に印刷、刺繍を行うのに必要な生産設備の導入を図った。設備面では、製造ラインとして下記を導入した。
①シルク印刷ライン |
②ガーメントプリントライン |
③アクリル商品製造ライン |
④刺繍ライン |
⑤その他 |
技術面では、当社は製造ノウハウを持っていなかった。そこで製品生産経験のある事業責任者を立て、その経験を基礎としてオリジナルプリントを手掛ける企業と技術指導契約を締結し、指導を受けた。
環境面では、レーザーカッターの製造時に臭気が排出されるため、粉塵脱臭装置とダクトを設置した。
人材面では、責任者、デザイン担当者、新規採用含め現在7名体制で生産を行っている。
成果
支援企業の指導により、早期に稼働できた。アクリル商品製造ラインの立上では、自前で治具を製作し高さの調整をすることで不良の発生を抑えることができた。またレーザーカッターでは、自動機の位置決めが簡単にできる設備を導入したため、設備の付属カメラによりUVプリンタで書かれたキャラクターを簡単に精度高く、切断することができるようになった。
自動運転による人手もかからないため、外部で仕入れるよりもコスト競争力も十分ある。
これまで2か月必要だった最低納期も試作込みで約1週間程度、欠品の対応であれば依頼日の翌日には商品を発送できるようになった。
いつからはじまる?申請スケジュール
明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金の申請は、4月1日から始まります。助成対象期間は、令和6年7月1日~令和7年9月30日です。
そのほか、申請のスケジュールや方法についてまとめました。
スケジュール
申請の書類提出から助成金交付までの流れとスケジュールは、以下のとおりです。
①申請書類提出:4月1日~4月8日 |
②書類審査(技術・経営) |
➂面接審査:6月中旬 |
④交付決定:7月1日(予定) |
⑤事務手続説明会:7月上旬 |
⑥遂行状況報告 |
⑦現地調査 |
⑧実績報告 |
⑨完了検査 |
➉助成金交付 |
申請方法
申請書類は、提出先まで郵送してください。なお、持参、メール等による提出はできません。
各書類は、東京都中小企業団体中央会ホームページから様式をダウンロードしてください。
必要書類
提出が必要な主な書類は、以下の①~⑧です。
①申請書 |
②説明資料 設計図、原理機構図、競合製品のカタログなど、必要な場合に適宜提出してください。 なお、直接人件費(ソフトウェアの開発)を申請する場合は、以下の資料が必須です。 ・企画書 ・計画、品質管理書 |
➂登記事項証明書(履歴事項全部証明書) ・個人事業主の場合は、開業届 ・団体の場合、定款・組合員名簿・総会または理事会の議事録 |
④社歴(経歴)書 |
⑤法人事業税および法人都民税の納税証明書 ・個人事業主は、直近の事業税の納税証明書(事業税が非課税の個人事業主は住民税の納税証明書) |
⑥確定申告書 |
⑦開発実施場所の地図 |
⑧返信用封筒 |
まとめ
物価高に対する賃上げの動きが活性化するなど、日本経済は変革の時期を迎えています。生活様式の変化や人の流れの回復を背景に、社会的ニーズも大きく変化してきました。
社会の変化は、ビジネスチャンスでもあります。この時期の新しい事業展開や業務効率の改善は、今後の企業の在り方を決める重大なチャレンジです。
都内企業の99%を占める中小企業の活性化は、東京都全体の経済活動を支える力となります。明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金をはじめとする支援事業を活用し、持続可能で、社会的意義の大きな企業成長を目指しましょう。