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「130万円の壁」見直し!2年間一時的超過でも扶養内と認定

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労働者不足が深刻化する中、非正規労働者の現場では「年収の壁」が注目を集めています。手取り金額が減ることを避けるために労働時間を調整するパート・アルバイトの方々を補助するため、国は「年収の壁・支援強化パッケージ」を発表しました。

今回はそのなかで、いわゆる「130万円の壁」の見直しの詳細について、お伝えします。

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この記事の目次

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130万円の壁とは

厚生年金保険および健康保険では、会社員の配偶者等で一定の収入がない場合、国民年金第3号被保険者被扶養者として、保険料の負担がありません。

しかし、パート・アルバイト労働者は年収が106万円を超えると厚生年金保険・健康保険に、130万円以上では国民年金・国民健康保険に加入することになります。こうした場合、保険料を負担する分、手取り収入が減少するのです。収入の減少を避けるために労働時間を調整する動きは、「106万円の壁」や「130万円の壁」と呼ばれます。

特に130万円を超えた場合、被扶養者認定基準を満たさなくなるため、会社によっては配偶者手当等がなくなることもあります。厚生労働省の調査では、意識してこうした事態を避けて年収を調整している女性パートタイム労働者は57.3%に上りました。

出典:厚生労働省 「年収の壁」への当面の対応策

この「壁」の存在は、非正規労働者が労働時間を延ばし、収入を増やす動きを妨げていることが指摘されています。

「130万円の壁」の見直し内容

130万円の壁は労働者にとって収入増加の障害となるだけでなく、企業にとっても労働力確保の妨げとなっています。この問題の解決には、労働者が手取りの減少を意識しなくてよい環境を整えることが重要です。

「年収の壁・支援強化パッケージ」では、特例的な処置として「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」が設置されました。その内容や対象者、上限額について見ていきましょう。

130万円の壁への対応

130万円の壁の見直しでは、「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」が設定されました。これは労働時間延長等に伴う一時的な収入変動によって年収が130万円を超えたパート・アルバイト労働者に対し、事業主が証明することで、引き続き被扶養者として認定されるようにした仕組みです。

事業の全体像については、以下の図も参照してください。

出典:厚生労働省 「130万円の壁」でお困りの皆様へ

開始時期※2月15日更新

「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」は、令和5年10月から開始されました。具体的には、令和5年10月20日以降の被扶養者認定および被扶養者の収入確認から適用されます。

これ以前の扶養認定および被扶養者に係る確認については、遡及できません。

「130万円の壁」に関する今回の措置は、年収の壁を解消するための一時的な対策として導入されており、将来的な制度の見直しを前提としています。この見直しは、2024年の財政検証を経て、年金制度の改正に向けた社会保障審議会年金部会での議論を踏まえて行われる予定です。今後の具体的な対応については、議論の進展に応じて順次公表されることになります。

対象者

制度の対象となるのは、以下のすべてに該当する場合です。

■短時間労働者である被扶養者(第3号被保険者等)である
■一時的に、年収が130万円以上となる
■事業主の証明が提出されている

なお、新たに被扶養者認定を受ける労働者も対象です。

上限額

今回の措置には、上限額は設定されていません。ただし、以下の場合は、被扶養者の認定が取り消されることがあります。

【被扶養者が被保険者と同一世帯に属している場合】
被扶養者の年間収入が被保険者の年間収入を上回る

【被扶養者が被保険者と同一世帯に属していない場合】
被扶養者の年間収入が被保険者からの援助による収入額を上回る

また、同一の者については原則として連続2回までを上限とします。

130万円の壁の見直し よくある質問

厚生労働省では、130万円の壁の見直しに関するQ&Aが公表されています。ここではそのなかから、特に重要なものをいくつか見ていきましょう。

Q1. フリーランスや自営業の場合、措置の対象になる?

特定の事業主と雇用関係にない場合、「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」の対象とはなりません。なお、フリーランスや自営業者としての収入と、勤務先からの給与収入の両方があるケースでは、給与収入が一時的な収入変動で増加したことにより被扶養者の認定基準額を超えた場合は対象となります。

Q2. 被扶養者が障害者や60歳以上である場合は?

被扶養者が障害者や60歳以上の者である場合、年間収入の要件は180万円未満です。「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」は、この判定の判断にも適用されます。

Q3. 事業主の証明はいつ、どこに提出する?

新たに被扶養者の認定を受ける際、もしくは健康保険組合等の保険者が被扶養者の資格確認を行う際に、年間収入が確認されます。事業主の証明は、このタイミングで各保険者へ提出されます。

したがって、各保険者の被扶養者の収入確認時に、被扶養者の勤務先の事業者から一時的な収入変動である旨の証明を取得してください。

Q4. どの期間に対応する収入について、証明すればよいのですか

各保険者の被扶養者の収入確認のタイミングや、通常求められる書類によって異なります。詳細な運用については、ご加入の健康保険組合等にご確認ください。

Q5. 事業主の証明を提出しさえすれば、引き続き被扶養者に該当する?

年間収入が恒常的に130万円以上となることが明らかであるような場合には、被扶養者には該当しません。また、収入以外の要件を満たさなくなった場合にも、社会保険の被扶養者から外れます。

130万の壁見直しの影響とは

少子高齢化が進む日本では、労働人口の減少が深刻化しています。子どもの数は、すぐには増えません。労働者を増やすためには、いまいる労働者の働き方や環境の改革が必要です。

「130万円の壁」のために労働時間を減らしている労働者のなかには、もっと収入を増やしたいと考えている人も多くいます。特に親の被扶養者になっている若者や、配偶者に扶養されている女性は、年収の壁がなくなれば労働時間を延ばすことも期待されます。こうした層の収入や労働が増えることは、ジェンダー格差や社会の多様性など、さまざまな課題の解決にもつながるのです。

年収130万円という金額は、自立した生活を送るには足りない数字です。年収が150万円だったとしても、手取り金額は130万円に届きません。月2万円近く多く稼いでいるはずなのに、手取りの金額がむしろ少なくなるのでは、働く意欲がなくなるのは普通の感覚でしょう。

一方で、社会保険制度は国民全体で支えていくものです。国民皆保険制度のないアメリカでは、治療費の高さから、貧富の差によって病院に通えなくなる人が出るなどの問題も起きています。

働きやすさと社会制度を両立させるためには、制度の見直しと状況に応じた支援が不可欠です。

今回の「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」は、一時的な措置であることが公表されています。また、恒久的に就労時間が延長された場合などは対象になりません。今後はこうした課題の解決を目指し、多くの人がより働きやすくなる制度改革が求められます。

まとめ

「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」では、一時的に年収が130万円を超えるパート・アルバイト労働者が、引き続き被扶養者として認定されるようになりました。ただしこれは、根本的な解決策ではありません。本格的な制度の見直しは、来年度以降へ持ち越されます。

とはいえ、こうした制度の見直しの動き自体は、社会全体にメリットがあることです。労働者はより働きやすい環境を目指し、事業主は労働力のさらなる確保に向けて、今後の国の動きを注視していきましょう。

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