2023年1月現在、家庭の電気料金の高騰が続いています。一般社団法人エネルギ―情報センターの調査結果によると、2022年1月時点で「23円/kWh」だった電気代は、2022年9月になると「28.59円/kWh」まで高騰しました。電気はほぼ毎日使うものであるため、毎月高騰し続けるのは家庭にとって大きな痛手です。
家庭の電気代として特に大きな割合を占めるのが「給湯分野」です。2020年度に資源エネルギー庁が発表した結果によると、家庭用エネルギー消費の「27.8%」を給湯が占める、という結果になりました。電気代の約3割が給湯で占められていることを考えると、出費を節約するには自宅に設置している給湯機器を見直すことも重要です。
今回紹介する「給湯省エネ事業」は、上記の現状を踏まえ、指定の給湯設備を導入する家庭に対し費用補助を行う制度です。「家族がいるので給湯設備を使う機会が多い」など、電気代・ガス代が上がりやすい要因を持つご家庭はぜひチェックしておきましょう。もしかすると、自宅に導入予定の設備が補助対象になっているかもしれません。
参考:一般社団法人エネルギ―情報センターの調査結果
参考:資源エネルギー庁 企業・事業所他部門のエネルギー消費の動向
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この記事の目次
給湯省エネ事業とは?
「給湯省エネ事業」とは、⾼効率給湯器を導⼊する家庭に対して一定金額の補助を実施することで、普及拡⼤を図るための事業です。
続く電気代の高騰、とくに給湯分野のエネルギー消費については、家庭の約3割を占めるため、出費の節約を考えるうえで「給湯設備を効率化させる」という点も重要です。
さらに給湯省エネ事業は、家庭の電気代・ガス代削減だけでなく、高効率給湯器の普及を推進することで家庭のエネルギー消費で⼤きな割合を占める給湯分野における省エネを達成し、「2030年度におけるエネルギー需給の⾒通し」の達成要因となることも⽬的としています。
なお「2030年度におけるエネルギー需給の⾒通し」とは、2030年度の温室効果ガス排出量を46%削減(2013年度比)するために必要な「省エネルギー化」「非化石エネルギーの拡大」などの施策を実施した際、どのようなエネルギー需給の見通しとなるかを示したものです。
給湯省エネ事業における申請手続きは、原則として給湯設備の工事事業者が代行するため、消費者側で行うことはありません。ただし、補助対象となる給湯設備には定めがあるため、最低限の項目は確認しておきましょう。
給湯省エネ事業で導入できる給湯器の種類について
給湯省エネ事業では、導入する高効率給湯器の種類に応じて一定額を補助しています。補助対象となる給湯器の種類や補助額などは以下の通りです。給湯器の種類 | 補助額 | 補助上限 | 性能要件 |
家庭用燃料電池(エネファーム) | 15万円/台 | 戸建て: いずれか2台まで 共同住宅等: いずれか1台まで |
・都市ガスやLPガス等から水素を作り、その水素と 空気中の酸素の化学反応により発電するもの ・一般社団法人燃料電池普及促進協会(FCA)の製品登録に 必要な要件を満たしたもの |
ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯器 | 5万円/台 | 戸建て: いずれか2台まで 共同住宅等: いずれか1台まで |
・熱源設備として電気式ヒートポンプとガス補助熱源機を 併⽤するシステムで、貯湯タンクを持つ機器 ・一般社団法人日本ガス石油機器工業会の規格(JGKAS A705)で 年間給湯効率が108%以上のもの |
ヒートポンプ給湯機(エコキュート) | 5万円/台 | 戸建て: いずれか2台まで 共同住宅等: いずれか1台まで |
・省エネ法上のトップランナー制度の対象機器である「エコキュート」とする ・上記のエコキュートのうち、2025年度の⽬標基準値以上のもの。 「おひさまエコキュート」については、おひさまエコキュートに適した測定方法が 確立されていないため、2025年度の⽬標基準値を満たしていないものも対象とする予定 |
各給湯器の詳細について、下記で簡単に解説しました。
家庭用燃料電池(エネファーム)とは?
「家庭用燃料電池(エネファーム)」とは、空気中の酸素と、日常で使っている都市ガス・LPガスから抽出した水素を化学反応させることで電気を作る設備を指します。エネルギーを燃やさず直接利用できるため、発電効率は高いです。さらに、電気を作る際に発生する排熱を用いて給湯などもできるため、有効的にエネルギーを活用できます。
ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯器とは?
「ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯器」とは、ハイブリット給湯器とも呼ばれている設備です。ヒートポンプ給湯器とガス温水機器を組み合わせることで、「電気・ガス」という2つの熱源を⽤いた⾼効率な給湯を可能としています。
具体的には、ヒートポンプ給湯器による電気で沸かしたお湯をタンクに貯蔵しておき、貯めたお湯が少なくなったらガス温水器を活用して素早く沸かす、という仕組みです。状況に応じてお湯の沸かし方を切り替えられるため、従来よりも電気代やガス代を節約できます。
ヒートポンプ給湯機(エコキュート)とは?
「ヒートポンプ給湯機(エコキュート)」とは、大気中の熱を自然冷媒(CO2)を活用して収集し、集めた熱を活用してお湯を沸かす仕組みです。集めた大気中の熱はコンプレッサーで圧縮され高温・高圧となり、熱交換によってお湯を沸かします。
大気中の熱を利用してお湯を沸かすため、より少ないエネルギーでお湯を沸かすことが可能となりました。自然冷媒は可燃性や毒性がないため、地球への負担もほとんどかかりません。
給湯省エネ事業の補助対象と申請の流れ
給湯省エネ事業では、以下の物件に設置された給湯設備が補助対象となります。
対象の住宅 | 補助対象者 | (リースの場合)共同事業者 |
■新築注文住宅 | 住宅の建築主 | 給湯器の所有権を持つリース事業者 |
■新築分譲物件 | 住宅の購入者 | 給湯器の所有権を持つリース事業者 |
■既存住宅(リフォーム) | 工事発注者 | 給湯器の所有権を持つリース事業者 |
新築物件以外に、既存住宅のリフォームについても補助対象となる点がポイントです。
給湯省エネ事業の申請手続きについては、消費者と契約を締結した事業者(工務店・ハウスメーカー・家電量販店等)が実施します。具体的な流れは以下の通りです。
【申請の流れ】
①事業者(手続き代行者として登録済)と消費者間で売買契約を締結する
②事業者が工事に着工する
③工事完了後に、事業者が事務局に補助金の交付を申請する
④審査完了後、事務局から消費者に直接補助金が交付される
基本的に消費者側で特別に手続きすべきことはありません。
事業者による「手続き代行者」の登録申請は、2023年1月17日からスタートします。交付申請期間は「2023年3月下旬〜予算上限に達するまで(遅くても2023年12月31日まで)」です。
申請手続きは事業者に任せればOKですが、予算を満たすと申請が打ち切られるため、給湯器の導入を検討している家庭は早めに事業者に相談しましょう。
【事業者向け】申請に関する詳細
給湯省エネ事業は、原則として消費者と契約を締結する「事業者側」が申請する必要があります。事前登録など注意すべき点も多いため、事業者の場合は細かくチェックしておきましょう。
「手続き代行者としての登録」について
給湯省エネ事業の手続きを実施する事業者については、手続き代行者としての登録が必要です。手続き代行者の登録は「令和5年1月17日〜」開始します。
なお、以下のケースでは事業者登録日の考え方が異なるため注意しましょう。
- 給湯省エネ事業の事務局開設日(令和4年12月16日) より前に「こどもみらい住宅支援事業」に登録している事業者は、(所定の手続きにより反対の意思を表明した場合を除き)本事業の事務局開設日(令和4年12月16日)を登録日とする
- 事務局開設日(令和4年12月16日)以降に「こどもみらい住宅支援事業」に登録した場合は、その申請日を事業者登録日とする
交付申請の際は、今後選定予定の事務局が定める登録規約に同意し所定の書類を提出したうえで、本事業の事業者登録を完了する必要があります。
交付申請時の必要書類
2023年1月時点で、申請時に必要な書類の詳細は未定です。予定としては、以下のような書類が必要になる可能性はあります。
- 契約日および着工日を確認できる契約書の写し
- 着工前写真(日付入り)
- 機器設置後の写真(日付入り)
- 給湯器の個別番号(品番等)が確認できる写真や書類
写真については、以下の点についても注意が必要です。
- 着工前、着工後共に、補助対象となる改修部位をすべて撮影する
- 可能な限り、現場名や施工業者名等が記⼊されたボード(工事看板)等を写して撮影する
- 着工前の写真は、着工箇所の状況や背景(場所)等が確認できるようする。着工後の写真は、敷設後の補助対象製品が⾒える状態で撮影する
公式サイトをチェックして、随時最新情報をチェックしておきましょう。
申請区分ごとにおける手続き代行者の違い
申請区分 | 設置する住宅 | 手続き代行者 | 契約内容 |
購入・工事 | 新築注文住宅 | 建築事業者(工事請負業者) | 工事請負契約 |
新築分譲住宅 | 販売事業者(販売代理を含む) | 不動産売買契約 | |
既存住宅(リフォーム) | 施工業者(工事請負業者) | 工事請負契約 | |
リース利用 | 新築注文住宅 | 給湯器の所有権を有するリース事業者 | リース契約(賃貸借契約) |
新築分譲住宅 | 給湯器の所有権を有するリース事業者 | リース契約(賃貸借契約) | |
既存住宅(リフォーム) | 給湯器の所有権を有するリース事業者 | リース契約(賃貸借契約) |
着工日の定義および交付申請時期について
申請区分 | 設置する住宅 | 着工日の定義 | 交付申請時期(表中に記載のタイミング以降で申請が可能) |
購入・工事 | 新築注文住宅 | 建築着工日 | 住宅の引渡し |
新築分譲住宅 | 住宅の引渡日 | 住宅の引渡し | |
既存住宅(リフォーム) | 給湯器の設置開始日(1台目) | 以下のいずれか早いほう ・工事の引渡し ・補助事業者による給湯器の利用開始 |
|
リース利用 | 新築注文住宅 | 住宅の引渡日 | 住宅の引渡し |
新築分譲住宅 | 住宅の引渡日 | 住宅の引渡し | |
既存住宅(リフォーム) | 給湯器の設置開始日(1台目) | 以下のいずれか早いほう ・工事の引渡し ・補助事業者による給湯器の利用開始 |
まとめ
今回は、電気代・ガス代を節約するために給湯器を導入したい家庭を対象とした「給湯省エネ事業」について、補助対象と申請の流れなど、消費者と事業者向けそれぞれの情報をご紹介しました。
給湯省エネ事業では、対象の給湯設備を導入する家庭に対して一定額の補助金が交付されます。費用負担を軽減し、省エネが見込める設備を導入できるのは魅力的です。予算には限りがあるため、給湯設備の導入を検討している家庭は、早めにリフォーム事業者、ハウスメーカー、工務店、家電量販店などに相談しておきましょう。