
新型コロナウイルスが5類感染症へ移行し、1か月が過ぎました。経済活動をはじめとした社会の動きは、少しずつコロナ禍前に戻ってきています。
雇用調整助成金では令和5年3月31日をもってコロナ特例の経過措置が終了しました。4月1日以降6月30日までに開始される休業等については、7月1日以降と一部制度が異なります。
今回は「4月1日~6月30日まで」と「7月1日以降」の制度の違いと、従来の雇用調整助成金制度についてまとめました。
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この記事の目次
雇用調整助成金のコロナ特例は、令和5年3月31日をもって終了
令和4年12月以降、雇用調整助成金は通常制度に戻っています。令和5年3月31日までは経過処置として、通常の要件とは一部が異なる制度が続いていました。4月1日以降に判定基礎期間の初日がある休業等については、支給要件を満たせば通常制度の利用が可能です。
なお6月31日までの支給要件は、一部が緩和されています。主な支給要件のうち、以下の2つはコロナ禍前と同様です。
1.直近3ヶ月の売上高などが、前年同期と比較して10%以上低下している
2.雇用保険被保険者等の直近3か月の平均値が5%を超え、かつ6名以上増加していない
また、緩和箇所は以下の4つです。
1.クーリング期間は「最後の休業等実施日を含む判定基礎期間末日から1年間」
2.計画届の提出が不要
3.残業相殺なし
4.労働者の一部のみを対象とした短時間休業も助成対象に
1~4の緩和箇所で、令和5年7月1日以降が判定基礎期間の初日である申請についてどうなるかを以下にまとめました。
1.クーリング期間は「最後の休業等実施日を含む判定基礎期間末日から1年間」⇒【7月1日以降 (通常制度)】クーリング期間は「対象期間終了」から1年以上、に。
「対象期間」とは、助成の対象となる1年間のことです。休業等の実績は1カ月単位の「判定基礎期間」で判定されます。1つの対象期間満了後に引き続き本助成金を受給する場合、通常その満了日の翌日から起算して1年間以上空けないと、新たな対象期間を設定することができません。これを「クーリング期間」と呼びます。
ただし新型コロナウイルス感染症の特例を利用したことがある事業主の場合には、当該対象期間内の最後の判定基礎期間末日の翌日から起算して1年間がクーリング期間です。
クーリング期間については、以下の図も参照してください。
出典:雇用調整助成金 リーフレット
2.計画届の提出が不要⇒【7月1日以降 (通常制度)】休業等の実施前に、計画届などの書類の提出が必要になります。
3.残業相殺なし⇒【7月1日以降 (通常制度)】判定基礎期間中に実施した休業等の延べ日数から、所定時間外労働日数を差し引きます。
※「残業相殺」の詳細については、後ほど詳しくお伝えします。
4.労働者の一部のみを対象とした短時間休業も助成対象に⇒【7月1日以降 (通常制度)】対象の労働者全員に対し、一斉に休業を実施したものが対象
雇用調整助成金とは
雇用調整助成金は、景気の変動や産業構造の変化などによって事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が一時的な雇用調整を実施し、従業員の雇用を維持した場合に交付される助成金です。具体的には、従業員を対象とした「休業」「教育訓練」「出向」が助成の対象となります。雇用調整助成金の支給要件
雇用調整助成金を受け取るためには、該当の事業主や取組が要件を満たしている必要があります。ここでは7月1日以降に再び適用となる「通常の支給要件」について見ていきましょう。
対象事業主
対象事業主の主な要件は、以下の6つです。
対象事業主の主な要件 |
1.「景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由」によって、事業活動の停止または縮小を行っている |
2.売上高などの指標の最近3か月間の月平均値が、前年同期に比べて10%以上減少している |
3.雇用保険被保険者数等の月平均値が、前年同期と比べて5%を超えてかつ6人以上 (中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上) 増加していない |
4.雇用調整の実施について労使間で事前に協定し、その決定に沿って雇用調整を実施する |
5.雇用保険適用事業主である |
6.労働局等の実地調査を受け入れる |
対象期間、日数
本助成金の対象期間と支給限度日数は、以下のとおりです。
対象期間 | 雇用調整を実施する、1年の期間 ・休業または教育訓練を行う場合は、該当の事業主が指定することができます ・出向を行う場合は、出向開始日から1年間です |
支給限度日数 | 1年間で100日分 3年で150日分 |
支給対象となる休業、訓練等
対象となる休業・教育訓練等の主な要件は、以下のとおりです。
1.休業 | ■労使間の協定によるもの ■対象期間内に行われるもの ■休業手当の支払いが労働基準法第26条の規定に違反していないもの ■所定労働日の所定労働時間内において実施されるもの ■所定労働日の全1日にわたるもの、または1時間以上行われるもの |
2.教育訓練 | ■職業に関連する知識、技術を習得・向上させることを目的とする教育 ■事業所内または外で、受講者の所定労働時間の全日または半日にわたり行われるもの (OJTは対象外) なお、教育訓練の実施中に教育訓練以外の業務を実施することはできません。 |
3.出向 | ■人事交流・経営戦略・業務提携・実習棟を目的とせず、出向労働者を交換しあうものでもない ■出向労働者の同意を得ている ■出向元事業主と出向先事業主との間で締結された契約によるものである ■出向先事業所が雇用保険の適用事業所である ■出向元事業主と出向先事業主に独立性が認められる ■出向先事業主が当該出向者の受入れに際し、従業員を事業主都合により離職させていない ■出向期間が3か月以上1年以内であって、出向元事業所に復帰するものである ■出向の終了後6か月以内に、当該労働者を再度出向させるものでない ■出向元事業所が出向労働者の賃金の一部 (のみ) を負担している ■出向前の賃金と概ね同じ額の賃金を支払う ■出向元事業所において、雇入れ助成の対象となる労働者等を受け入れていない ■出向者の受入れに際し、自己の労働者について本助成金等の支給対象となる出向を行っていない |
受給額
助成金額は取組の種類、また「中小企業」と「それ以外」で異なります。それぞれの助成金額は以下の通りです。
【休業・教育訓練】
休業を実施した場合の休業手当または教育訓練を実施した場合の賃金に相当する額に、以下の助成率を乗じて得た額が助成されます。
■中小企業:2/3
■それ以外:1/2
ただし、1人1日当たり雇用保険基本手当日額の最高額額(令和4年8月1日時点で8,355円)が上限です。
【教育訓練】
教育訓練を実施した場合、訓練費として、1人1日当たり1,200円を上記に加算します。
残業相殺
労働者を休業等させる一方、残業や休日出勤をさせた場合には労働者を休業等させずに働かせる必要性が新たに発生したことになります。残業相殺は休業等の延べ日数から、その残業や休日出勤をさせた分を控除する仕組みです。
【例】
所定労働時間1日8時間の事業所で10人の労働者が10日ずつ休業するいっぽう、4人が別の日に5日間にわたり各日2時間の所定外労働等をしていた場合
■休業等延べ日数
所定外労働等がなかった場合、10人×10日゠100人日
■所定外労働等の延べ日数
4人×5日×2時間÷1日 (8時間)=5人日
雇用調整助成金の助成対象休業等延べ日数
100人日-5人日=95人日
併給調整
以下の場合は、本助成金の支給対象外です。
■同一の教育訓練について、他の助成金を受給している場合
■同一の賃金等の支出について、他の助成金を受給している場合
雇用調整助成金の受給手続き
それでは雇用調整助成金の時給手続きについて見ていきましょう。手続きの流れと計画届について、まとめました。
手続きの流れ
手続きの流れは、以下のとおりです。
手続きの流れ |
1.雇用調整の計画 |
2.計画届の提出 |
3.雇用調整の実施 |
4.支給申請 |
5.労働局における審査・支給決定 |
6.支給額の振込 |
計画届
「休業等実施計画(変更)届」(出向は「出向実施計画(変更)届」)に必要な書類を添付し、都道府県労働局またはハローワークへ提出してください。事前に計画届の提出のなかった休業等については、本助成金の支給対象となりません。
なお令和5年4月1日から令和5年6月30日までの間に初日を設定する判定基礎期間においても、添付書類は支給申請時に提出する必要があります。
計画届の提出は支給対象期間 (出向の場合は支給対象期) ごとに行います。提出の期日は休業等を開始する日の前日までです。ただし初回の届出の場合は、休業等の初日の2週間前までをめどに提出してください。
支給申請
「支給申請書(休業等)」(出向の場合は「支給申請書(出向)」) に必要な書類を添付し、都道府県労働局またはハローワークへ提出してください。
支給申請も支給対象期間 (出向の場合は支給対象期) ごとに行います。申請の期日は支給対象期間 (出向の場合は支給対象期) の末日の翌日から2か月以内です。なお、申請の期日の末日が行政機関の休日である場合は、その翌日が締切日となります。提出は、締切日必着です。締切日を1日でも過ぎると、支給申請書を受け付けることができませんので注意してください。
まとめ
生活環境や社会の動きが正常化するのにあわせ、助成金等に設置されてきた特例も終了しつつあります。申請方法や要件も、経過処置や緩和によって少しずつ変化しています。助成金や補助金を申請する際には最新の要項をよく確認し、間違いのないよう、手続きを行ってください。